仏像十選

私が独断と偏見で決めた日本の仏像十選です。

一位:東大寺勧進所の五劫思惟(ごこうしゆい)阿弥陀仏座像
岩が衣で擦り切れて無くなるのにかかる時間を「一劫」と言う。この像は、阿弥陀如来が人々を救うため五劫の間考え続けている姿を表している。そのため頭髪は伸び切っているのが特徴。とても珍しい。表情が思慮深く、慈悲に満ちて、見ていて吸い込まれるような魅力がある。全ての仏教美術の頂点据えることのできる格調高い仏様。 
二位:法隆寺宝物館の百済観音
造形的な美しさは世界一と言える木造の大傑作。一見不自然とも思える長身、瓶を軽くつまんだ左手、風になびく様な薄絹。目鼻は磨耗してほとんど表情が分からないが、それは作為と思えるほど見事に全体と調和している。
三位:法隆寺金堂本尊の釈迦三尊
天才仏師鞍作止利(くらつくりのとり)の作と言われる飛鳥銅仏の傑作。静かな姿勢、面持ちでありながら、光背はなんと紅蓮の炎。哲学者梅原猛がそこに聖徳太子の怨霊の姿を見たのも、むべなるかなと思わせる宗教美術ならではの生々しさがある。四天王も素晴らしい。
四位:東大寺戒檀院の四天王
天平時代の写実塑造の最高傑作。薄暗い堂内の四隅に内側を向いて立つ等身大の像は息を飲む迫力である。黒曜石がはめ込まれたその視線は受けたものが凍り付いてしまうであろうと思われる鋭さ。単なる彫刻として見ても、世界的な名作である。特に広目天(こうもくてん)、多聞天(たもんてん)は個性的で、比肩するものが無い。
五位:聖林寺本尊の十一面観音
天平彫刻らしい堂々たる体躯で辺りを圧する、乾漆(かんしつ)の名作である。表面の漆一面にひびが入っているが、それでかえって凄みを増している。
六位:東大寺の弥勒如来座像
奈良の大仏を作る前の試作という意味で「試みの大仏」と呼ばれているが、実は造仏年代は後。身の丈数十センチの小仏でありながら、前のめりの語りかける様なその力強さは、大仏の名にふさわしい。
七位:国東半島国見付近の庚申塔(こうしんとう)
北九州は奈良と並んで野仏が素晴らしい。特に国東の野仏は完成度では奈良に及ばないが、素朴さと力強さは一段上である。庚申塔は抽象度が高いため傑作が多い。北九州の野仏を代表して選んだ。
八位:唐招醍寺金堂の十一面千手観音
最大の千手観音(多分)。本当に900本強の腕を持っている。身の丈5mを越しながら細工も細かい。堂々たる傑作。
九位:諏訪の万治の石仏
岡本太郎も感動したという、あまりにも有名な野仏。お椀を伏せた様な胴体と筒を乗せただけの様な頭部が妙に釣り合いが良い。
十位:東大寺南大門の金剛力士吽形(うんぎょう)
大仏師運慶の天才ぶりを示した傑作。快慶作と言われる阿形(あぎょう)の上品さに比べ、やり過ぎとも思える大胆さが金剛力士の凄みを出している。


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